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青山正さんを救援する関西市民の会

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更新日 2016-07-31 | 作成日 2016-07-31

「証拠ねつ造」野田事件・青山正さんにあたりまえの無罪を! 

1993年4月4日発行パンフレットより

 
 
1993年に発行したパンフレット「証拠ねつ造」の原稿を掲載します。 
文中の表現については当時のままとしています。 

 

第四章 「 私たちにとって 」

 
 私たちが、青山さんを無罪で取り戻すことは、私たちが失った何かを取り戻すことではないだろうか。野田事件が私たちに問いかけるものは多い。
 家庭・地域・学校・職場、常識・規則・法律、そしてありとあらゆる領域の「専門家」たち。それらはすべて私たちの幸せのためにあると思われてきた。本当にそうなのだろうか・・・。

憲法と障害者問題


《憲法、国際人権規約に照らしあわせて》

 最高裁で問われていること青山さんの裁判は、現在最高裁で書面審理の最中である。

日本の裁判制度は三審制であるが、同じ手続を三回行なうわけではない。一、二審、特に一審では、事実認定についての争いを公開の法廷における証拠調べを中心にして審理するが最高裁では、主として憲法違反や判例違反そして補充的に重大な「事実誤認」を密室での書類審理を中心に審査するに過ぎない。

 だから、上告後三年半が経過した現在、最高裁で法廷を開かせて、重要な物証であるカバン(そのネーム片)のねつ造の認定を中心とした事実調べを行なわせなければならない極めて重要な局面にある。

 しかし、上告理由として主張している憲法違反の問題、つまり要約的にいえば障害者差別の問題も、右の事実誤認の問題(青山さんが犯人ではないという問題)と勝とも劣らないほど重要な問題である。


《憲法が保障するもの》

 憲法は、その一三条で「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法をその他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定している(個人の尊厳原理。幸福追求権)。また、一四条一項では、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、心情、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。」と規定されている(平等原理。差別されない権利、平等保護請求権)。

 ここには、言葉としては「障害者」という言葉はないが、「すべて」の個人に対する規定なので、当然障害をもつ個人が、「個人として尊重」去れねばならないこと、及び、法の下に平等であって」、「差別され「ず」」、また、「平等のかつ効果的な保護を受ける権利を有する」(国際人権規約自由権規約二六条参照)ことが憲法上保障されている。では、障害をもつ青山さんが、捜査・裁判という刑事司法過程で、「個人として尊重される」扱いを受けてきたのだろうか。「差別され「ず」」、「平等かつ効果的な保護を受ける権利」を与えられただろうか。もし、正当な扱い・保護を受けてなかっとしたらそれは憲法違反であり、どのような扱いがされるべきであったかを訴えることが、憲法・人権の観点から野田事件をとらえ返すことになる。上告理由として論じられている憲法論は、障害者差別を明らかにして、障害をもつ個人が、刑事司法手続のなかでどのようなことを要求できるのかを論じているものである。

 なお、国際人権上の権利侵害も憲法論と別個に論じなければならないが(憲法九八条二項)、ここでは、憲法論に関係する範囲で触れるにとどめることにする。


《弁護団の主張》

 これまで出されきた弁護団による上告趣意書(上告趣意補充書等を含む)では、まとめると次のような憲法論が展開されようとしている。

一、適正手続(デュー・プロセス)違反

 主要には、青山さんの自白の任意性・信用性を調べるのに録音テープやビデオテープを使用したことの憲法三八条、三一条違反の問題である。これらのテープについては、録音テープは録音レベルが極めて悪く、またいずれのテープについてもマスターテープなく、捜査機関によって数度のダビングや編集がされたものが証拠として法廷に出されており、とても「適正」な証拠とはいえないからである。

 この問題は、もちろん青山さんに障害があることも絡むが、障害がないと考えても、証拠として提出されたテープに、およそ刑事事件の証拠となるような適正性がないことが問題とされねばならない。

二、障害をもつ者の平等権侵害(その一)

 平等権を国家行為の禁止の側面から(消極的側面から)とらえた場合の平等権侵害の問題で、差別的な見込み捜査の対象とされない権利(憲法一四条一項、一三条)の違反を問題とするものである。

三、障害をもつ者の平等権侵害(その二)

 平等権を国家行為を要求する側面から(積極的側面から)とらえた場合の平等権侵害の問題である。障害をもつ個人は、単に差別の禁止を要求できるにとどまらず、個人とし ての(一)尊厳確保、(二)自立促進、(三)社会参加に向けた、平等かつ効果的な法の保護を受けるための特別のケアを、国家や公共団体に要求できる権利が保障されている(憲法一四条一項、一三条、二五条、二六条。これらの各条文を総合すればこうした権利が保障されていなければならない)。

 具体的には、(一)権利などの抽象的概念の理解能力に優れなかった青山さんに対して、黙秘権等の諸権利について十分に理解できるように積極的・実質的告知をせず、形式的告知で済ませたことは、黙秘権等の諸権利について積極的・実質的告知を受ける権利を侵害し平等の保護を受ける権利を侵害したものである。(二)捜査機関に対して迎合的になりやすく自己の権利を一人で十分に守ることに優れなかった青山さんに対して、密室室での取調べを続行し弁護人と相談する機会すら与えなかったのは、障害をもつ者に平等の保護を与えなかったもので、取調中止義務、弁護人選任義務違反である。(三)青山さんの取調べにおいて、捜査機関は弁護人や肉親の立会いをさせず、それを要求できる青山さんの権利を侵害し障害をもつ者の平等の保護を受ける権利を侵害した。



 弁護団は「重大な事実誤認」の主張と共に、これらの憲法違反の問題を最高裁につきつけている。